1621ねん5がつ3にちウェストミンスターWestminsterイングランドEngland大法官だいほうかんフランシスFrancisベーコンBacon貴族院きぞくいんから23けん収賄しゅうわいつみ有罪ゆうざい宣告せんこくされた。罰金ばっきん4まんポンド、ロンドンLondonとうへの収監しゅうかん公職こうしょく追放ついほうイングランドEnglandもっと権勢けんせいほこった法律家ほうりつかの、あっけない転落てんらくだった。60さい政治的せいじてき生命せいめいわった。だがこの人物じんぶつにはもうひとつの仕事しごとがあった。人類じんるい学問がくもんまるごと設計せっけいなおすこと。失脚後しっきゃくごの5年間ねんかんベーコンBaconはそちらに没頭ぼっとうした。

ベーコンBaconたのは、学問がくもん停滞ていたいだった。アリストテレスAristotelēs以来二千年にせんねん自然しぜんについての知識ちしきはほとんど進歩しんぽしていない。なぜか。人間にんげんかしこくないからではない。方法ほうほう欠陥けっかんがあるからだ。三段論法さんだんろんぽう知識ちしき整理せいりすることはできる。だが整理せいり発見はっけんではない。あたらしいむには、べつ道具どうぐがいる。ベーコンBaconはその道具どうぐ設計せっけいしようとした。

しかもベーコンBaconは、道具どうぐつくまえにまずやまい診断しんだんした。人間にんげん知性ちせいはなぜゆがむのか。よっつの偶像ぐうぞう──イドラidola種族しゅぞく由来ゆらいするもの、個人こじん由来ゆらいするもの、言語げんご由来ゆらいするもの、学説がくせつ由来ゆらいするもの。カーネマンとトヴェルスキーが認知にんちバイアスの体系的たいけいてき研究けんきゅう着手ちゃくしゅするのは1970年代ねんだいのことだ。この法律家ほうりつかは、それより400ねんはやく、人間にんげん認知にんち構造的こうぞうてき欠陥けっかん一覧表いちらんひょうにしていた。

ちからなり」(ipsa scientia potestas estイプサ・スキエンティア・ポテスタース・エスト)。この一句いっくだけがひとあるきしてきた人物じんぶつの、設計図せっけいず全貌ぜんぼうてみよう。それはどこまで有効ゆうこうで、どこに限界げんかいがあるのか。

この記事きじ要点ようてん

  • よっつのイドラidola人間にんげん知性ちせい構造的こうぞうてきゆがめるよっつの「偶像ぐうぞう」──種族しゅぞくのイドラ(人間にんげんというしゅ共通きょうつうするゆがみ)、洞窟どうくつのイドラ(個人こじん性格せいかく教育きょういく環境かんきょうによるかたより)、市場しじょうのイドラ(言葉ことば思考しこうしばる)、劇場げきじょうのイドラ(既存きそん学説がくせつ事実じじつおおかくす)。『ノヴム・オルガヌムNovum Organum』第一巻で展開てんかいされた認知にんち障害しょうがい体系的たいけいてき診断しんだんだ。
  • 帰納法きのうほうと『ノヴム・オルガヌムNovum OrganumアリストテレスAristotelēs演繹的えんえきてきな『オルガノンOrganon』(論理学ろんりがく著作集ちょさくしゅう)にわる「あたらしい道具どうぐ」。観察かんさつ実験じっけんのデータを存在表そんざいひょう不在表ふざいひょう程度表ていどひょう整理せいりし、排除はいじょ比較ひかくによって原因げんいんしぼむ。近代きんだい科学かがく方法論ほうほうろん原型げんけい
  • 学問がくもん大革新だいかくしんInstauratio Magnaインスタウラーティオー・マグナ全体ぜんたい六部ろくぶ構成こうせい再編さいへんする壮大そうだい計画けいかく未完みかんわったが、科学かがく個人こじん天才てんさいではなく制度せいど方法ほうほう問題もんだいとして構想こうそうしたてんで、ロイヤルRoyalソサエティSocietyから現代げんだい研究機関けんきゅうきかんまで、科学かがく制度設計せいどせっけいながかげとしている。

生涯しょうがい時代じだい背景はいけい

1561ねん1がつ22にちロンドンLondonストランドStrandにあるヨークYorkハウスHouseまれた。ちちエリザベスElizabeth女王じょおう国璽尚書こくじしょうしょLord Keeper of the Great Sealロード・キーパーサーSirニコラスNicholasベーコンBaconははアンAnnギリシャGreeceラテンLatinつうじた教養人きょうようじんで、カルヴァンCalvin著作ちょさく英訳えいやくした。権力けんりょく学識がくしき食卓しょくたく空気くうきだった。

12さいケンブリッジCambridge大学だいがくトリニティTrinityカレッジCollege入学にゅうがく。ここでアリストテレスAristotelēs哲学てつがく教育きょういくけたが、のちにベーコンBaconは「ケンブリッジCambridgeおしえられていた哲学てつがくむすばない論争ろんそうばかりだった」と回顧かいこしている。2ねんあまりで学位がくいらずにり、駐仏ちゅうふつ大使たいし随員ずいいんとしてフランスFranceわたった。外交がいこう現場げんば権力けんりょく機微きびまなんだが、1579ねんちち急死きゅうし帰国きこく次男じなんだったため相続そうぞくはわずか。法曹ほうそう資格しかくるためにグレイズGray'sインInnはいり、法律家ほうりつかとしてのキャリアがはじまった。

1584ねんから国会議員こっかいぎいん政治的せいじてき庇護者ひごしゃとしてエセックスEssexはくロバートRobertデヴァルーDevereuxちかづいたが、エセックスEssexはくが1601ねん女王じょおうたいする反乱はんらんこすと、ベーコンBacon検察けんさつがわまわり、かつての庇護者ひごしゃ訴追そつい加担かたんした。おんあだかえ裏切うらぎものか、ほうへの忠誠ちゅうせい私情しじょう優先ゆうせんさせた法律家ほうりつかか。評価ひょうかいまれている。

1603ねんジェイムズJames一世いっせい即位そくい風向かざむきがわった。ベーコンBacon急速きゅうそく出世しゅっせし、1607ねん法務次官ほうむじかんSolicitor Generalソリスター・ジェネラル)、1613ねん法務長官ほうむちょうかんAttorney Generalアトーニー・ジェネラル)、1617ねん国璽尚書こくじしょうしょ、1618ねん大法官だいほうかんLord Chancellorロード・チャンセラー)。イングランドEngland司法しほう最高位さいこういである。だが頂点ちょうてんは3ねんしかたなかった。

1621ねん弾劾だんがい訴訟そしょう当事者とうじしゃから贈り物おくりものっていたことが発覚はっかくした。ベーコンBacon事実じじつみとめ、「わたしはきたなかでもっと公正こうせい裁判官さいばんかんだったが、過去かこ五十ねんもっと公正こうせい判決はんけつは、わたし自身じしんくだされた判決はんけつだった」といた。実際じっさいには贈り物おくりもの判決はんけつ左右さゆうした証拠しょうこうすく、背景はいけいには国王こくおう議会ぎかい政治的せいじてき対立たいりつがある。だが汚名おめいえなかった。のこりの5ねん著述ちょじゅつついやし、1626ねん4がつ9にちぼつした。享年きょうねん65。ジョンJohnオーブリーAubreyの『名士めいし小伝しょうでん』(Brief Livesブリーフ・ライヴズ)によれば、ゆき使つかった冷凍れいとう保存ほぞん実験中じっけんちゅう体調たいちょうくずしたという。はなし真偽しんぎはともかく、最後さいごまでうごかしていたという伝承でんしょうのこること自体じたいが、この人物じんぶつ生涯しょうがい象徴しょうちょうしている。

ミニ年表ねんぴょう

  • 1561ねんロンドンLondonヨークYorkハウスHouseまれる
  • 1573ねん:12さいケンブリッジCambridge大学だいがくトリニティTrinityカレッジCollege入学にゅうがく
  • 1576〜79ねん駐仏ちゅうふつ大使たいし随員ずいいんとしてフランスFrance滞在たいざい
  • 1584ねん国会議員こっかいぎいん初当選はつとうせん
  • 1597ねん:『エッセーズEssays初版しょはん(10ぺん刊行かんこう。『せいなる瞑想めいそう』で「ちからなり」
  • 1605ねん:『学問がくもん進歩しんぽ』(The Advancement of Learningジ・アドヴァンスメント・オブ・ラーニング刊行かんこう
  • 1618ねん大法官だいほうかん就任しゅうにんヴェルラムVerulam男爵だんしゃく
  • 1620ねん:『ノヴム・オルガヌムNovum Organum刊行かんこう。『学問がくもん大革新だいかくしん』の第二部だいにぶ
  • 1621ねん収賄しゅうわい弾劾だんがい失脚しっきゃく
  • 1623ねん:『学問がくもん尊厳そんげん進歩しんぽについて』(De Dignitate et Augmentis Scientiarumデ・ディグニターテ・エト・アウグメンティース・スキエンティアールム刊行かんこう
  • 1626ねん4がつ9にちロンドンLondon近郊きんこうハイゲイトHighgateにてぼつ
  • 1627ねん:『ニュー・アトランティスNew Atlantis遺稿いこうとして刊行かんこう

この哲学者てつがくしゃなにうたのか

出発点しゅっぱつてんは、学問がくもん停滞ていたいたいするふかいきどおりであった。アリストテレスAristotelēsんでから1900ねん自然しぜんについての確実かくじつ知識ちしきはどれだけえたか。ほとんどえていない。航海術こうかいじゅつ火薬かやく印刷術いんさつじゅつ──このみっつは古代こだいにはなく、だれ発明はつめいしたかもわからないまま世界せかいえた。だが偶然ぐうぜん産物さんぶつであって、方法ほうほう勝利しょうりではない(『ノヴム・オルガヌムNovum Organum』第一巻 箴言しんげん百二十九)。三段論法さんだんろんぽう教室きょうしつ論争ろんそうつための道具どうぐであって、自然しぜん法則ほうそく見出みいだ道具どうぐではない。「三段論法さんだんろんぽう自然しぜん微妙びみょうさにたいしては到底とうていおよばない」(どう 箴言しんげん十三)。大前提だいぜんていただしければ結論けつろんただしい──だが肝心かんじんのその大前提だいぜんていはどこからるのか。権威けんいか、慣習かんしゅうか、直感ちょっかんか。いずれもあやしい。

既存きそん哲学てつがく三種さんしゅ分類ぶんるいして批判ひはんされた(箴言しんげん六十二)。詭弁的きべんてき哲学てつがく──経験けいけんとぼしいまま概念がいねん空転くうてんさせる。代表だいひょうアリストテレスAristotelēsだ。経験的けいけんてき哲学てつがく──少数しょうすう実験じっけんから性急せいきゅう体系たいけいむ。錬金術師れんきんじゅつしがその典型てんけいだ。迷信的めいしんてき哲学てつがく──神学しんがく自然しぜん研究けんきゅうむ。ピタゴラスPythagoras学派がくはプラトンPlatōn一部いちぶがこれにあたる。どれも、自然しぜん自然しぜんのほうから姿勢しせいたない。

ではなぜ方法ほうほうあらためられないままなのか。問題もんだい方法ほうほうだけにあるのではない──ベーコンBaconはそうた。人間にんげん知性ちせいそのものに亀裂きれつはいっている。ゆがんだかがみうつったぞうを、ひとはそのまましんじる。まずかがみゆがみをらなければ、なに観察かんさつしてもゆがんだ結果けっかしかられない。治療ちりょうまえ診断しんだん──300年前ねんまえロジャーRogerベーコンBaconが『大著作だいちょさく』(Opus Majusオプス・マーユス)で「よっつの障害しょうがい」としてこころみたことを、フランシスFrancis格段かくだん精緻せいちかたち仕立したなおした。

核心かくしん理論りろん

1. よっつのイドラidola人間にんげんはなぜ間違まちがえるのか

ノヴム・オルガヌムNovum Organum』第一巻 箴言しんげん三十九〜六十八。人間にんげん知性ちせいゆがめる原因げんいんを、ベーコンBaconよっつに分類ぶんるいし、「イドラidola」とづけた。偶像ぐうぞう──知性ちせいがそれとらずにおがんでしまう、にせぞうだ。

種族しゅぞくのイドラidola tribusイドラ・トリーブース)。人間にんげんというしゅ共通きょうつうするゆがみ。感覚かんかく不完全ふかんぜんだ。とおくのものをちいさくる。知性ちせい秩序ちつじょ見出みいだしたがり、自分じぶん都合つごうのいい証拠しょうこ過大かだい評価ひょうかし、不都合ふつごう証拠しょうこ無視むしする(箴言しんげん四十六)。ベーコンBaconれいげた。あらしうみから生還せいかんした人々ひとびと神殿しんでん奉納物ほうのうぶつささげているせられたものが、「かみいのればたすかる」としんじる。だがおぼれたもの奉納物ほうのうぶつささげない。生存者せいぞんしゃのデータだけがはいり、死者ししゃのデータはえる。確証かくしょうバイアスと生存者せいぞんしゃバイアス──現代げんだい心理学しんりがくがようやく名前なまえをつけた現象げんしょうが、この一節いっせつにすでにある。

洞窟どうくつのイドラidola specusイドラ・スペクース)。個人こじん体質たいしつ教育きょういく経験けいけん読書どくしょ遍歴へんれきによるかたより。名前なまえプラトンPlatōn洞窟どうくつ比喩ひゆからっている。ひとりひとりが自分じぶんだけの洞窟どうくつり、はいってくるひかり屈折くっせつさせている。ベーコンBaconげたれいのひとつはアリストテレスAristotelēsだ。かれ自然しぜん哲学てつがく論理学ろんりがく従属じゅうぞくさせ、自分じぶん得意とくい道具どうぐ世界せかいった(箴言しんげん五十四)。医師いしウィリアムWilliamギルバートGilbert磁石じしゃく研究けんきゅうから出発しゅっぱつして宇宙全体うちゅうぜんたい磁力じりょく説明せつめいしようとした(箴言しんげん五十四)。自分じぶん得意とくいわくが、世界せかいそのもののわくえてしまう。

市場しじょうのイドラidola foriイドラ・フォリー)。言葉ことば思考しこう汚染おせんする。ひと市場しじょうわすやりとりのなかでまれる誤解ごかいベーコンBaconはこれをもっと厄介やっかいなイドラとんだ(箴言しんげん五十九)。問題もんだい二重にじゅうだ。だい一に、存在そんざいしないものに名前なまえあたえられ、言葉ことばがあるだけで実体じったいがあるとおもむ。「運命うんめい」「第一動者だいいちどうしゃ」「元素げんそとしての」──ベーコンBaconはこれらを空虚くうきょ名前なまえだんじた。だい二に、実在じつざいするものを不正確ふせいかくける言葉ことば。「湿しめる」という一語いちごが、みず流動性りゅうどうせい粘着性ねんちゃくせいというまったくことなる現象げんしょうをくくってしまう(箴言しんげん六十)。曖昧あいまい思考しこう代用品だいようひんになる。

劇場げきじょうのイドラidola theatriイドラ・テアトリー)。哲学てつがく体系たいけい舞台ぶたい脚本きゃくほんのように現実げんじつ演出えんしゅつしてしまう。アリストテレスAristotelēs主義しゅぎプラトンPlatōn主義しゅぎスコラScholaがく──完結かんけつした体系たいけい自己じこ完結かんけつしているがゆえに、体系たいけいわないデータを排除はいじょする。批判ひはん対象たいしょう特定とくてい学説がくせつではない。学説がくせつかたまったときにこる知的ちてき閉塞へいそくそのものだ。トマス・クーンKuhnが『科学かがく革命かくめい構造こうぞう』(1962ねん)でろんじた「パラダイムの呪縛じゅばく」の、先駆せんくにあたる洞察どうさつだ。

2. 帰納法きのうほう三表法さんぴょうほう自然しぜんから法則ほうそく手続てつづ

ノヴム・オルガヌムNovum Organum』──「あたらしい道具どうぐ」。書名しょめい自体じたいが、旧来きゅうらい方法論ほうほうろんへの挑戦ちょうせん意味いみしている。アリストテレスAristotelēs論理学ろんりがく著作集ちょさくしゅうオルガノンOrganon』(道具どうぐ)にわる、発見はっけんのための道具どうぐ具体的ぐたいてき手続てつづきが展開てんかいされるのはおも第二巻だいにかんだ。

ベーコンBacon帰納法きのうほう単純たんじゅん枚挙まいきょではない。調しらべたい性質せいしつ──たとえばねつ──について、みっつのひょうつくる。存在表そんざいひょうtabula essentiae et praesentiaeタブラ・エッセンティアエ・エト・プラエセンティアエ):ねつあらわれる事例じれいあつめる。太陽光たいようこう摩擦まさつ火山かざん馬糞ばふん発酵はっこうベーコンBaconは27れい列挙れっきょした。不在表ふざいひょうtabula declinationis sive absentiae in proximoタブラ・デークリナーティオーニス):条件じょうけんなのにねつあらわれない事例じれい月光げっこう太陽光たいようこうているがあつくない。程度表ていどひょうtabula graduumタブラ・グラドゥウム):ねつ増減ぞうげん追跡ついせきする。動物どうぶつ運動うんどうするとあつくなり、静止せいしするとめる。三表さんぴょうわせ、該当がいとうしない候補こうほ排除はいじょしていく。ひかりねつ原因げんいんではない(月光げっこうねつはない)。質料しつりょう種類しゅるい原因げんいんではない(あらゆる物体ぶったい摩擦まさつねつつ)。こうして排除はいじょすえに、ねつ本質ほんしつ膨張ぼうちょうしようとする微粒子びりゅうし運動うんどうである、という「最初さいしょ収穫しゅうかく」(vindemiatio primaウィンデミアティオー・プリーマ)に到達とうたつする(第二巻 箴言しんげん二十)。

三表法さんぴょうほうくわえて、ベーコンBaconは「特権的とっけんてき事例じれい」(instantiae praerogativaeインスタンティアエ・プラエロガティーウァエ)を27しゅ列挙れっきょした(『ノヴム・オルガヌムNovum Organum』第二巻)。観察かんさつのなかでもとく情報量じょうほうりょうおお事例じれいえら技術ぎじゅつだ。なかでも「十字路じゅうじろ事例じれい」(instantia crucisインスタンティア・クルーキス)は後世こうせい最大さいだい遺産いさんになった。ふたつの対立たいりつする仮説かせつのどちらがただしいかを一挙いっきょ決定けっていする実験じっけんのちロバートRobertフックHookeやアイザック・ニュートンNewtonもちいた「決定実験けっていじっけん」(experimentum crucisエクスペリメントゥム・クルーキス)のは、ここに由来ゆらいする。

この手続てつづきが近代きんだい科学かがく実験じっけん方法ほうほう直接ちょくせつかどうかは議論ぎろんがある。J.S.ミルMillの「差異法さいほう」「一致法いっちほう」「共変法きょうへんほう」がここから発展はってんしたことは明白めいはくだが、ベーコンBacon自身じしん数学すうがく軽視けいししていた。自然しぜん法則ほうそく数式すうしき記述きじゅつするという発想はっそうは、同時代どうじだいガリレオGalileoにはあったが、ベーコンBaconにはなかった。

3. 学問がくもん大革新だいかくしんInstauratio Magnaインスタウラーティオー・マグナ):全面的ぜんめんてき再建さいけん

1620ねん刊行かんこうされた計画けいかく全体図ぜんたいず。その扉絵とびらえ象徴的しょうちょうてきだ。ヘラクレスHēraklēsはしら──古代こだい世界せかいてとされたジブラルタルGibraltar海峡かいきょう──をけて帆船はんせん大洋たいよう。そのした銘文めいぶん。「おおくのものい、す」(Multi pertransibunt et augebitur scientiaムルティー・ペルトランシーブント・エト・アウゲービトゥル・スキエンティア旧約きゅうやく聖書せいしょダニエルDanielしょ』12しょう4せつから)。古代こだい限界げんかいえよ、という宣言せんげんだ。

六部ろくぶ構成こうせい第一部だいいちぶ学問がくもん区分くぶん(『学問がくもん進歩しんぽ』で大部分だいぶぶん遂行すいこうみ)。第二部だいにぶが『ノヴム・オルガヌムNovum Organum』。第三部だいさんぶ自然しぜん実験じっけん歴史れきし集成しゅうせい第四部だいよんぶ帰納法きのうほう具体的ぐたいてき適用例てきようれい第五部だいごぶ暫定的ざんていてき結論けつろん第六部だいろくぶ完成かんせいされたあたらしい哲学てつがく第三部だいさんぶ以降はほとんどかれなかった。構想こうそうおおきさに一人ひとり生涯しょうがいいつかなかった。

未完みかん挫折ざせつだろうか。ベーコンBacon自身じしんはそうかんがえていなかった。この計画けいかく最初さいしょから、一人ひとり生涯しょうがい完成かんせいするものではなく、世代せだいえた共同きょうどう事業じぎょうとして構想こうそうされていた。肝要かんようなのは、科学かがく個人こじん天才てんさい依存いぞんさせないことである。方法ほうほう制度せいど資金しきんさえあれば、凡人ぼんじん集団しゅうだんでも前進ぜんしんする。『学問がくもん大革新だいかくしん』の序文じょぶんDistributio Operisディストリブーティオー・オペリス)にこうかれている。「わたしの方法ほうほう知性ちせいをほぼひとしくする。定規じょうぎやコンパスがあれば、たくみさに関係かんけいなく直線ちょくせんえんえがけるように」。

4. 「ちからなり」──実践じっせん一致いっち

そのものがちからである」(ipsa scientia potestas estイプサ・スキエンティア・ポテスタース・エスト)。『せいなる瞑想めいそう』(Meditationes Sacraeメディタティオーネース・サクラエ、1597ねん)の「異端いたんについて」の一節いっせつだ。原文げんぶん文脈ぶんみゃくではかみについてかたっているが、ベーコンBacon自身じしんが『ノヴム・オルガヌムNovum Organum』でおな構造こうぞう人間にんげん適用てきようしたことで、この世俗的せぞくてき標語ひょうごとしてひとあるきをはじめた。後世こうせいには「知識ちしきちからなり」(scientia est potentiaスキエンティア・エスト・ポテンティア)のかたちでもひろまった。

たんなるスローガンではない。『ノヴム・オルガヌムNovum Organum』の冒頭ぼうとうベーコンBaconはこういている。「人間にんげんちからひとつにする。なぜなら原因げんいんらなければ結果けっかせないからだ。自然しぜん服従ふくじゅうすることによってでなければ征服せいふくされない」(第一巻 箴言しんげん三)。ちから別物べつものではなく、おな行為こういふたつのめんだ。ここがアリストテレスAristotelēsとの決定的けっていてき分岐点ぶんきてんになる。アリストテレスAristotelēsにとって最高さいこう純粋じゅんすい観照かんしょうtheōriaテオーリア)だった。なにつくらない、なにえない。ただる。ベーコンBaconにとって操作そうさだ。自然しぜん原因げんいんめ、結果けっか再現さいげんする。ることとつくることが、ひとつになる。

実用じつようむすびつけたことで、科学かがく国家こっか産業さんぎょう道具どうぐになった。ベーコンBaconはそれをのぞんだ。かれにとって人類じんるい幸福こうふく拡張かくちょう同義どうぎだった。だが「ちから」は、支配しはい道具どうぐにもする。20世紀せいきアドルノAdornoホルクハイマーHorkheimerは『啓蒙けいもう弁証法べんしょうほう』(1947ねん)で、ベーコンBacon名指なざしにした。啓蒙けいもう自然しぜん支配しはい経由けいゆして人間にんげん支配しはい転化てんかする、と。ここには誇張こちょうがある。だがちからへの意志いしへの意志いし直結ちょっけつさせた功罪こうざいは、ベーコンBaconからはなれない。

5. 『ニュー・アトランティスNew Atlantis』とソロモンSolomonいえ科学かがく制度せいど構想こうそうする

1627ねん遺稿いこうとして刊行かんこうされた未完みかんのユートピア小説しょうせつ太平洋たいへいよう上の架空かくう島国しまぐにベンサレムBensalemには、「ソロモンSolomonいえ」(Solomon's Houseソロモンズ・ハウス)とばれる国立こくりつ研究機関けんきゅうきかんがある。地下ちか洞窟どうくつでの鉱物こうぶつ実験じっけん高塔たかとうでの気象きしょう観測かんそく庭園ていえんでの植物しょくぶつ品種ひんしゅ改良かいりょう薬品やくひん開発かいはつおとひかり実験じっけん研究者けんきゅうしゃ徹底てっていした分業制ぶんぎょうせい組織そしきされている。「ひかり商人しょうにん」(Merchants of Lightマーチャンツ・オブ・ライト)が海外かいがいからあつめ、「略奪者りゃくだつしゃ」(Depredatorsデプリデイターズ)が書物しょもつから抽出ちゅうしゅつする。「開拓者かいたくしゃ」(Pioneersパイオニアーズ)があたらしい実験じっけんこころみ、「編纂者へんさんしゃ」(Compilersコンパイラーズ)が結果けっかひょう整理せいりする。「灯火ともしび」(Lampsランプス)があたらしい実験じっけん指揮しきし、最上位さいじょういの「自然しぜん解釈者かいしゃくしゃ」(Interpreters of Natureインタープリターズ・オブ・ネイチャー)が観察かんさつから一般いっぱん法則ほうそくみちびく。

小説しょうせつかたちをした設計図せっけいずだ。1660ねんロンドンLondon王立協会おうりつきょうかいRoyal Societyロイヤル・ソサエティ)が設立せつりつされたとき、創設者そうせつしゃたちはみずからをベーコンBacon遺志いし継承者けいしょうしゃ位置いちづけた。科学かがく孤独こどく天才てんさいいとなみからはなち、組織そしき資金しきん分業ぶんぎょうによる集団的しゅうだんてき事業じぎょうとして構想こうそうしたこと──この発想はっそう転換てんかんは、帰納法きのうほうやイドラろんよりもはるかにおおきな実績じっせきのこした。

主要しゅよう著作ちょさくガイド

  • 学問がくもん進歩しんぽ』(The Advancement of Learningジ・アドヴァンスメント・オブ・ラーニング、1605ねん):英語えいごかれた最初さいしょ主要しゅよう哲学書てつがくしょのひとつ。学問がくもん現状げんじょう批判ひはん知識ちしき全体ぜんたい地図ちず提示ていじ入門にゅうもんにはここから。邦訳ほうやく服部はっとり英次郎えいじろう多田ただ英次えいじやく学問がくもん進歩しんぽ岩波文庫いわなみぶんこ
  • ノヴム・オルガヌムNovum Organum』(1620ねん):ベーコンBacon哲学てつがく中核ちゅうかくよっつのイドラと帰納法きのうほう箴言しんげん形式けいしきかれており、一篇いっぺんずつひろみできる。邦訳ほうやくかつら寿一じゅいちやくノヴム・オルガヌムNovum Organum──新機関しんきかん岩波文庫いわなみぶんこ
  • ニュー・アトランティスNew Atlantis』(1627ねん遺稿いこう):科学かがくユートピアの構想こうそう。「ソロモンSolomonいえ」の描写びょうしゃみどころ。みじかいので一気いっきめる。邦訳ほうやく川西かわにしすすむやくニューNewアトランティスAtlantis岩波文庫いわなみぶんこ
  • エッセーズEssays』(1597ねん初版しょはん、1625ねん最終版さいしゅうばん):「真理しんりについて」「について」「復讐ふくしゅうについて」など58ぺん英文学えいぶんがく古典こてんとしてまれてきた散文さんぶん名品めいひん邦訳ほうやく渡辺わたなべ義雄よしおやくベーコンBacon随筆集ずいひつしゅう岩波文庫いわなみぶんこ
  • 学問がくもん尊厳そんげん進歩しんぽについて』(De Dignitate et Augmentis Scientiarumデ・ディグニターテ、1623ねん):『学問がくもん進歩しんぽ』のラテンLatin拡大版かくだいばん大革新だいかくしん第一部だいいちぶにあたる。知識ちしき全体ぜんたい地図ちずとして、ダランベールd'AlembertディドロDiderotの『百科全書ひゃっかぜんしょ』に直接ちょくせつ影響えいきょうした。

主要しゅよう批判ひはん論争ろんそう

同時代どうじだい批判ひはんはまず人格じんかくけられた。エセックスEssexはく裏切うらぎった人物じんぶつ賄賂わいろちた大法官だいほうかん腐敗ふはい診断しんだんした当人とうにんが、権力けんりょく腐敗ふはいまっていた──この落差らくさは、後世こうせい批評家ひひょうかたちにとって格好かっこう批判ひはんまとであった。医学者いがくしゃウィリアムWilliamハーヴェイHarvey──血液けつえき循環じゅんかん発見者はっけんしゃでありベーコンBacon私的してき主治医しゅじいでもあった──は、「かれ大法官だいほうかんのように哲学てつがくく」とひょうした(ジョンJohnオーブリーAubrey名士めいし小伝しょうでん』による)。制度せいど設計せっけいするが自分じぶんではうごかさない、という皮肉ひにくだ。詩人しじんアレグザンダーAlexanderポープPopeはもっと端的たんてきだった──「人類じんるいもっとかしこく、もっとかがやかしく、もっと卑劣ひれつな」(長詩ちょうし人間論にんげんろん』第四書簡しょかん、1734ねん)。19世紀せいき歴史家れきしかマコーレーMacaulayおな路線ろせんで、知性ちせい絶賛ぜっさんしつつ道徳どうとく容赦ようしゃなくさばいた(「ベーコンBaconろん」『エディンバラEdinburghレヴューReview』1837ねん)。

方法論ほうほうろんへの批判ひはんは、より根本的こんぽんてき問題もんだいふくんでいる。デイヴィッドDavidヒュームHume提起ていきした帰納きのう正当化せいとうか問題もんだい過去かこ太陽たいようのぼったという事実じじつから、明日あしたのぼるという結論けつろん論理的ろんりてきにはてこない。帰納きのう習慣しゅうかんであって論証ろんしょうではない、と。カールKarlポパーPopperはさらにんだ。科学かがく帰納きのう法則ほうそくを「確認かくにん」するのではなく、大胆だいたん仮説かせつてて反証はんしょうfalsificationファルスィフィケーション)をこころみるいとなみだ(『科学的かがくてき発見はっけん論理ろんり』1934ねん)。ポパーPopperにとって、ベーコンBacon帰納主義きのうしゅぎというあやまった神話しんわ創始者そうししゃだった。

この批判ひはんにも留保りゅうほがいる。ベーコンBacon単純たんじゅん枚挙的まいきょてき帰納きのうみずか退しりぞけている。かれ方法ほうほう排除はいじょ比較ひかくふくんでおり、ポパーPopper批判ひはんした「しろ白鳥はくちょうをいくらかぞえてもくろ白鳥はくちょうがいないことにはならない」式の素朴そぼく帰納きのうとは構造こうぞうちがう。ただしベーコンBacon数学すうがく軽視けいしし、仮説かせつ役割やくわり過小かしょう評価ひょうかしたことはたしかだ。同時代どうじだいガリレオGalileoケプラーKeplerがすでに数学すうがく駆使くしして自然しぜん法則ほうそく記述きじゅつしていたことをかんがえると、ベーコンBacon方法論ほうほうろん最先端さいせんたん科学かがく実践じっせんからはずれた場所ばしょにあった。

影響えいきょう遺産いさん

もっと具体的ぐたいてき遺産いさんは、1660ねんロンドンLondon王立協会おうりつきょうかいだ。初期しょき会員かいいんたちはベーコンBacon精神的せいしんてき父祖ふそあおいだ。トマスThomasスプラットSpratは『王立協会おうりつきょうかい歴史れきし』(1667ねん)のなかで、ベーコンBacon実験じっけん哲学てつがく創始者そうししゃとしてたたえている。実際じっさい王立協会おうりつきょうかい事業じぎょうソロモンSolomonいえ青写真あおじゃしんをかなり忠実ちゅうじつになぞっていた。

フランスFrance啓蒙けいもう主義しゅぎへの影響えいきょう甚大じんだいだ。ダランベールd'Alembertは『百科全書ひゃっかぜんしょ序論じょろん(1751ねん)で、知識ちしき分類ぶんるいベーコンBacon体系たいけいもとづいて構築こうちくした。記憶きおく歴史れきし)・理性りせい哲学てつがく)・想像力そうぞうりょく芸術げいじゅつ)という三分法さんぶんぽうベーコンBaconの『学問がくもん進歩しんぽ』に由来ゆらいする。ヴォルテールVoltaireベーコンBaconを「実験じっけん哲学てつがくちち」とんだ(『哲学書簡てつがくしょかん』第十二書簡しょかん、1734ねん)。

イギリスBritain経験論けいけんろん系譜けいふでは、ロックLockeバークリーBerkeleyヒュームHume背後はいごベーコンBaconがいる。直接ちょくせつ影響えいきょうというより、経験けいけんから出発しゅっぱつせよという姿勢しせい地盤じばんつくった。19世紀せいきにはJ.S.ミルMillが『論理学ろんりがく体系たいけい』(1843ねん)でベーコンBacon三表法さんぴょうほう精密せいみつ発展はってんさせ、帰納法きのうほう定式化ていしきかした。大西洋たいせいようわたったアメリカでは、トマスThomasジェファソンJeffersonベーコンBaconニュートンNewtonロックLockeを「世界せかいがこれまでんだもっと偉大いだい三人さんにん」とび(ベンジャミンBenjaminラッシュRushあて書簡しょかん、1811ねん)、三人さんにん肖像画しょうぞうが自邸じていモンティセロにかざった。

20世紀せいきはいって、ベーコンBacon二方面にほうめんから再読さいどくされた。ひとつは科学かがく社会学しゃかいがく方面ほうめん科学かがく社会的しゃかいてき制度せいどであるという認識にんしき先駆せんくとして。もうひとつは批判理論ひはんりろん方面ほうめんアドルノAdornoホルクハイマーHorkheimer指摘してきしたように、「ちから」の論理ろんり自然しぜん支配しはい人間にんげん支配しはい転用てんようしうる。ベーコンBacon近代きんだい科学かがく功績こうせきつみ両方りょうほう出発点しゅっぱつてんっている。

現代げんだいへの接続せつぞく

健康けんこう食品しょくひん広告こうこくに「個人こじん感想かんそうです」とちいさくいてあるのを、何人なんにんんでいるか。「んだら体調たいちょうがよくなった」──体験談たいけんだん記憶きおくのこり、「んでもわらなかった」ひとこええる。種族しゅぞくのイドラだ。どもの教育きょういくおな構造こうぞうつ。自分じぶんけた教育きょういく物差ものさしにして「最近さいきんは」となげくのは、洞窟どうくつのイドラだ。ベーコンBacon診断しんだんしたが、治療法ちりょうほうはほとんどかなかった。診断しんだんは17世紀せいきわっている。治療ちりょうのほうは、まだだ。

科学かがく再現性さいげんせい危機ききreplication crisisレプリケーション・クライシス)も同根どうこん問題もんだいだ。心理学しんりがく医学いがくで、追試ついししてもおな結果けっかない論文ろんぶん続出ぞくしゅつしている。出版しゅっぱんバイアス、p値ぴーちハッキング、サンプルサイズsample size不足ふそく理論りろんうデータだけをひろい、わないデータをてる──劇場げきじょうのイドラそのものが、査読さどく論文ろんぶんのなかで再演さいえんされている。

ちからなり」のさきなおされている。製薬せいやく会社がいしゃやまい原因げんいんり、治療薬ちりょうやくつくり、特許とっきょ利益りえきる。農薬のうやくメーカーmaker害虫がいちゅう生態せいたいり、駆除剤くじょざいつくり、土壌どじょうみず副作用ふくさようのこす。「原因げんいんり、結果けっか再現さいげんする」というベーコンBacon図式ずしきは、だれがそのにぎり、だれ結果けっかけるかといういを、最初さいしょから内蔵ないぞうしていた。ちからになるとき、そのちからだれにあるのか。

読者どくしゃへの

  • 自分じぶんしんじていることのうち、確証かくしょうバイアス(種族しゅぞくのイドラ)によって補強ほきょうされているだけのものはないか。反対はんたい意見いけん最後さいごにまじめにんだのはいつか。
  • あなたの専門せんもん得意とくい分野ぶんやが、あなたの「洞窟どうくつ」になっていないか。専門せんもんそとにある問題もんだいを、専門せんもん道具どうぐだけでさばこうとしていないか。
  • ちからなり」を座右ざゆうめいにしたとき、その「ちから」はだれかうのか。自然しぜんたいしてか、他人たにんたいしてか。

名言めいげん出典しゅってんつき)

そのものがちからである」 出典しゅってんフランシスFrancisベーコンBaconせいなる瞑想めいそう』(1597ねん)「異端いたんについて」/原文げんぶん:"Ipsa scientia potestas est."

ベーコンBacon全思想ぜんしそう一文いちぶん凝縮ぎょうしゅくした格言かくげん価値かち観照かんしょうにではなく、世界せかいえるちからにある。

人間にんげんちからひとつにする。なぜなら原因げんいんらなければ結果けっかせないからだ」 出典しゅってんフランシスFrancisベーコンBaconノヴム・オルガヌムNovum Organum』第一巻 箴言しんげん三/原文げんぶん:"Scientia et potentia humana in idem coincidunt, quia ignoratio causae destituit effectum."

実行じっこう別物べつものではなく、おなじものの表裏ひょうりだ。原因げんいんることが、結果けっか操作そうさする唯一ゆいいつ手段しゅだんだ。

三段論法さんだんろんぽう自然しぜん微妙びみょうさにたいしては到底とうていおよばない」 出典しゅってんフランシスFrancisベーコンBaconノヴム・オルガヌムNovum Organum』第一巻 箴言しんげん十三/原文げんぶん:"…cum sit subtilitati naturae longe impar."

論理ろんり思考しこう整理せいりするが、自然しぜん発見はっけんしない。ベーコンBaconアリストテレスAristotelēsけた根本的こんぽんてき異議いぎ表明ひょうめい

自然しぜん服従ふくじゅうすることによってでなければ征服せいふくされない」 出典しゅってんフランシスFrancisベーコンBaconノヴム・オルガヌムNovum Organum』第一巻 箴言しんげん三/原文げんぶん:"Natura enim non nisi parendo vincitur."

箴言しんげん三の後半こうはん自然しぜん征服せいふくするためには、まず自然しぜん法則ほうそく謙虚けんきょしたがわなければならない。ちからへのみちは、謙虚けんきょ観察かんさつとおる。

参考さんこう文献ぶんけん

  • 原典げんてん英語えいご/ラテンLatin:Francis Bacon, The Works of Francis Bacon, ed. James Spedding, Robert Leslie Ellis and Douglas Denon Heath, 14 vols., Longmans, 1857–1874.(標準ひょうじゅん全集ぜんしゅう
  • 原典げんてん邦訳ほうやくフランシスFrancisベーコンBaconノヴム・オルガヌムNovum Organum──新機関しんきかんかつら寿一じゅいちやく岩波文庫いわなみぶんこ
  • 原典げんてん邦訳ほうやくフランシスFrancisベーコンBacon学問がくもん進歩しんぽ服部はっとり英次郎えいじろう多田ただ英次えいじやく岩波文庫いわなみぶんこ
  • 研究書けんきゅうしょ:Perez Zagorin, Francis Bacon, Princeton University Press, 1998.
  • 研究書けんきゅうしょ:Lisa Jardine and Alan Stewart, Hostage to Fortune: The Troubled Life of Francis Bacon, Victor Gollancz, 1998.
  • 研究書けんきゅうしょ邦語ほうご石井いしい栄一えいいちフランシスFrancisベーコンBacon自然しぜん哲学てつがく──ちから哲学てつがく系譜けいふ──』御茶おちゃみず書房しょぼう
  • 概説がいせつ:Stephen Gaukroger, Francis Bacon and the Transformation of Early-Modern Philosophy, Cambridge University Press, 2001.
  • 補助ほじょウェブweb資料しりょう:"Francis Bacon", Stanford Encyclopedia of Philosophy.